「長距離自然歩道構想50周年記念シンポジウム」を開催


12月8日、環境省主催(共催:NPO法人みちのくトレイルクラブ、九州自然歩道フォーラム)の「長距離自然歩道構想50周年記念シンポジウム」を開催いたしました。

1969年1月、最初の長距離自然歩道である東海自然歩道構想が発表されました。当時は高度成長期まっただ中。東京・名古屋・大阪を中心に都市が発展していきました。それに待ったをかけるため、東京~大阪間に自然を守る線を引く意味で、東海自然歩道構想が生まれました。

それを見た九州経済連合会は観光に使えると、九州自然歩道を提唱。73年に東海自然歩道が開通した次に、九州自然歩道の整備が開始され、1980年、2番目の長距離自然歩道として、九州自然歩道が誕生しました。

それから39年、時代が変化していく中で、新しい取り組みとして、みちのく潮風トレイルが開通。地域住民と協力し、各地にサテライト施設を設置、官民協働で運営を行っていく方式になりました。それは、長距離自然歩道のこれからの在り方の一つのモデルと考えます。

今回の「長距離自然歩道構想50周年記念シンポジウム」は、過去の長距離自然歩道の取り組みを学びつつ、これからの50年を考えること。
鳥居環境省自然環境局長より初めの挨拶をいただき、

文化人類学者で東京外語大学の今福龍太先生から「〈歩くこと〉の系譜、〈歩くこと〉の恩寵」と題して、先人たちの歩くことを辿っていただきました。
また、神田修二さんからは、長年環境省で自然歩道に関わってきた経験と研究を「長距離自然歩道の軌跡」として、50年以上の歴史を話していただきました。

そして、フォーラムからは事務局長の福島が、現在の取り組みを紹介。行政のみで管理している自然歩道の現状と課題を話しつつ、民間からのアプローチを伝えました。

九州の大きな課題としては、歩道の一部しか国立公園でないため、環境省も九州7県も主導できない状態であること。もう一つが、コース情報が更新されていないため、どこが道なのか歩けるのか分からないところが多いこと、を上げました。その行政ではしづらい隙間を一緒に埋めるために、九州自然歩道フォーラムは民間の立場から協働していく取り組みを行っていることをお伝えしました。
後半は、パネルディスカッション。

司会に環境省職員および九州自然歩道フォーラム幹事の岡野さん、
パネリストに、
今福龍太先生(東京外語大学大学院教授/文化人類学者)
櫻庭佑輔氏(東北地方環境事務所自然環境整備課課長補佐)
佐々木豊志氏(NPO法人みちのくトレイルクラブ代表理事)
長谷川晋(長距離ハイカー/ハイカーズデポ/トレイルブレイズHI所長)
が登壇され、みちのく潮風トレイルの現状や長い距離を歩く意義、歩くことでできる平和などを話していただきました。

最後に、これからの50年を担う若者代表として、福島より閉会の挨拶をさせていただき、閉幕しました。


今までに長距離自然歩道をテーマに開催されたことはないため、かなりチャレンジな企画でしたが、おかげさまで100名を超える方にご参加いただきました。短い時間の中、登壇者皆さまの経験と研究の一滴を出していただき、深い内容になったかと思います。
今回のシンポジウムは、きっかけに過ぎません。長距離自然歩道の抱える課題はたくさんあり、今のプレーヤーだけでは解決できないことが多々あります。みちのく潮風トレイルが示してくれたように、官民そして地域が協働で行う時代になっています。なので、これからの長距離自然歩道には、この投稿を見ている皆さまの力も必要となります。事例も少なく課題解決の方針も分からないこともあるので、皆さんとともに調査や勉強会を重ねて、日本のナショナルトレイルとして、世界へ誇れる道にしていきたいと考えています。次は、2023年の東海自然歩道50周年記念にこういった機会を設けたいと話しております。九州はその前に来年が開通40周年記念なので、何かしたいと思っております。今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします。

ご参加いただいた皆さま、この投稿を読んでいただいた皆さま、ありがとうございました。

主催 環境省
共催 特定非営利活動法人みちのくトレイルクラブ、九州自然歩道フォーラム

環境省報道発表 https://www.env.go.jp/press/107389.html